近くの空き地につくと、くるくるとリードの許す範囲を駆け回るメイさんの走る姿は、サラブレットの走りを見るような美しさがあります。
メイさんの犬種であるイングリッシュセッターは、昔から鳥猟のハンターさんたちの優れたパートナーとして活躍してきた歴史があるそうです。今では狩猟に出掛けることはなくなったということで、メイさんは狩猟に関する特別な訓練を受けてはいません。
それでもメイさんが家族になるずっと前の40年以上昔のこと、お父さんはお兄さんとともに兄弟で狩猟をしていたのだそうです。家にはセッターとポインター、2匹の犬がいて、鴨や雉の他、ウサギの狩猟もしていたそうです。
僕は狩猟という文化に触れたことがなかったので、たくさんお話を聞かせてもらいました。狩猟の日には朝早くから出掛けて行くのだそうです。そして猟のあとには、鴨鍋をするのだそうです。お話を聞いていると、なんだかおとぎ話の世界をイメージするようでした。
僕はメイさんの優雅な姿を見ていたので、おとぎ話のような美しい光景にメイさんの姿が重なって見えてきました。ある冬の晴れた早朝、北風が吹いていて、乾いた土の広がる地面に立ち、枯れた草叢の境界に踏み入れようとする間際、ハンターの横顔をメイさんが見上げている。まるでイギリスの絵本に出てきそうな光景を、僕は空想していました。
書き手/カメラマン 杵嶋 宏樹
1979年神奈川県出身。2000年「東京工芸大学 芸術学部写真学科」入学、2004年卒業。「広川事務所」に就職し、写真家・広川泰士氏のアシスタントを務める。29歳に独立し、ラジオ番組のスチールや雑誌など関東を中心に活動。2023年12月に波佐見町へ移住。
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