なだらかな斜面には家や田畑が広がっています。田畑に沿って流れる複数の用水路はその傾斜を降りてきてカーブを作って合流し、まとまりながら川棚川に向かっていくようです。集束していく用水路に区切られた区画の底辺に、マルさんが毎日歩くグラウンドがあります。マルさんはグラウンドに着くと、犬の手紙が残されていそうな端にある草むらに向かうのではなく、子どもたちがボール遊びをしていたような、のびのびとした場所を楽しそうにまわっているようでした。
このグラウンドには野球のバックネットがあって小さな野球ができるようになっています。僕が小学校の3・4年生の時、放課後毎日遊んでいたクラスメイトの友達5人組で野球遊びをしていたことを思い出します。「いのしゃん」「まなしゃん」「よっち」「えんこん」「きっちゃん」。蛍光のゴムボールとプラスチックのバット。
書き手/カメラマン 杵嶋 宏樹
1979年神奈川県出身。2000年「東京工芸大学 芸術学部写真学科」入学、2004年卒業。「広川事務所」に就職し、写真家・広川泰士氏のアシスタントを務める。29歳に独立し、ラジオ番組のスチールや雑誌など関東を中心に活動。2023年12月に波佐見町へ移住。
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