やきものの産地である波佐見に、観光という要素が加わった歴史は意外に浅く2004年頃からといわれています。きっかけは「グリーンクラフトツーリズム研究会」ができたこと。まずは中尾山の製陶所跡を改修した活動拠点「文化の陶 四季舎」が完成し、その後に同じく製陶所跡を活用した「西の原」が誕生しました。
この物語を語る上で欠かせない存在があります。それがやきものの総合商社「西海陶器株式会社(以下西海陶器)」です。「西海陶器」の活動は幅広く、やきものの卸・販売はもちろんのこと、前述した「西の原」や「NPO法人 グリーンクラフトツーリズム研究会」などを通して、波佐見焼の伝統をつなぐ活動、町の将来を見据えたツーリズム推進にも精力的に取り組んできました。
2019年、「西海陶器」の新しい取り組みとしてスタートしたのが『Hasami Life』です。自社の通販サイトでありながらも、コンテンツを覗いてみると“波佐見焼”を軸にした町の魅力が多く取り上げられているのが特徴です。時には窯元探訪、時には製麺所の工場見学、時には波佐見を舞台にした漫画の話…さながら“波佐見町のホームページ”。“焼き物は暮らしの中でこそ華やぐ”をコンセプトにしたサイトは器好きに支持され、Instagramは2万人を超えるフォロワーとなっています。
そんな『Hasami Life』が、現在編集長候補・編集部を募集しているとのことで、編集部の田添智早さんにお話を聞きに行ってきました。
『Hasami Life』の編集を担当している田添さん。外部の編集ライターやデザイナーのサポートを受けながら、『Hasami Life』のよみものを中心とした運営を行っています。
田添さんは長崎市出身の25歳、入社して3年になります。「経営や経済、マーケティングに興味があり、長崎総合科学大学でマネジメント工学を専攻していました。大学のゼミで波佐見に来るようになって、弊社の常務取締役の小林に出会いました。“長崎にこんなところがあったんだ”と驚いて、それがきっかけで入社しました」と田添さん。最初の1年はグリーンクラフトツーリズムの活動をサポートし、2年目からは『Hasami Life』の編集部に配属されました。
写真や文章を書くことはほとんど未経験でしたが、先輩や外部ライターからの指導を受けながら覚えていったそう。「器の写真を撮ることも多いので、アプリを使ってアイデアを集めたりもしています。あくまで主役は器なので、器が魅力的に見えるような料理だったり、アングルがマンネリ化しないようになど自分なりに工夫しています」
『Hasami Life』の魅力は多彩な読み物です。取材先は営業スタッフからリサーチすることも多いそう。「初めての取材は陶房青さんでした。これも営業の人から“おもしろいから行ってみて”と言われて取材先に選びました。陶房青さんは、2020年から事業継承で新しいスタートを切った窯元です。波佐見は家族経営が多く、後継者不足が深刻な問題です。そんななか、親族ではない人にバトンタッチされた珍しいケース。この記事を通して、波佐見焼が抱えている課題も知ってもらえたら」と田添さん。『Hasami Life』は、“波佐見焼を紐解くことで、まちの姿が垣間見え、まちに暮らす人たちを知ることで、波佐見町の本当の魅力を知ることができる”と考えています。
つづく…
〜おまけ〜