iktsuarpok|イクツアルポーク

移住者が伝える、波佐見への移住

フラットな立場で
波佐見の町づくりにも関わっていきたい

2021年10月。波佐見焼の産地メーカー「マルヒロ」が、直営ショップを備えた私設公園「HIROPPA」をオープンさせました。そのなかにテナントとして入っているのが、コーヒースタンド「OPEN-END」です。オーナーを務めるのは、福岡市から移住した松尾敬介さん。福岡市でアパレルや飲食、イベント業務と様々な経験を積んだ松尾さんが、波佐見でお店をオープンさせることになった経緯をうかがいました。

「大人と子どもの遊びの場」として造られたHIROPPA

「手に職を」と求めて飛び込んだ
コーヒーの世界

アパレルに始まり、飲食のマネージメント、商品開発、イベント事業と様々な業務に携わってきた松尾さん。福岡のトレンドを見分ける様々な経験をしていましたが、26歳の時、ふと「手に職がない、技術を持っていない」と立ち止まったといいます。そこで飛び込んだのがコーヒーの世界。就職したのは、コーヒー激戦区と言われる福岡市内で3店舗を展開する「manucoffee」でした。
“コーヒーを通じて街をデザインする”という考えのもと、街と人とカルチャーを繋ぐ新しいチャレンジをしている「manucoffee」。入社後はコーヒーを学び、バリスタコンテストに挑戦するなどコーヒーの世界を深めていきました。「“手に職を”と飛び込んだコーヒーの世界でしたが、コーヒー業界の人は職人肌の人が多い。突き詰めていくような…。でも、自分はそのタイプじゃないなと気づきました」と松尾さん。3年が経ち、商品開発やイベント企画などにシフトしていきます。

商品開発で出会った
「マルヒロ」3代目の馬場匡平さん

「manucoffee」のオリジナルマグカップの商品企画で出会ったのが、「マルヒロ」で3代目を務める馬場匡平さんでした。2019年転機が訪れます。馬場さんから“公園を作るから手伝ってほしい”と声をかけられたのです。「自分でコーヒー屋をしたいという思いもあったし、公園を作るなんていう経験はなかなかできないなと」とその時を思い返します。
「HIROPPA」のコンセプトづくりや設計士の選定にも関わった松尾さん。自身の店舗となる「OPEN-END」の内装もアイデアを出したと言います。「OPEN-ENDという屋号には、“自由な”という思いを込めています。なので、外なのか内なのか境界が分からない造りを意識してもらいました。コーヒーを手に、公園でも店内でもどこでも自由な楽しみ方ができるように」。その言葉通り、店内から緩やかなカーブを描いたカウンターは、外と中を繋ぐユニークな造りになっています。

「福岡での暮らしが忘れられないかも」
波佐見での暮らしで変わったこと

「OPEN-END」の準備を始めた2020年2月に波佐見に移住した松尾さん。当初は、ずっとここにいるつもりはないと思っていたそうです。しかし、暮らすうちに少しずつ変化していると言います。「福岡での暮らしとはかなり変わりました。正直、福岡での暮らしが忘れられないのではと思っていました。波佐見に来てからは、朝から夕方まで働いて夜はゆっくり過ごすことが多い。自炊も増えました。仕事もあるのでたまに福岡に行きますが、夜には“帰りたいな”と思うように。田舎暮らし、好きかもしれないですね 笑」。
オープンから1年半。新しい展開も考えているそう。「お店のスイーツはmanucoffeeで一緒に働いていた田島さんが担当しています。今は小さなカウンターの中で作っているのですが、もう少し余裕のある場所で作らせてあげたい。余白が生まれれば、もっと違う展開もできる」と期待します。コーヒーに合う手作りのスイーツも評判の「OPEN-END」。スイーツの製造と販売ができるような場所を探しているそうです。

外がカリッ、中がもっちりのカヌレのほか、レモンケーキなど季節のスイーツも登場する

ローカルに根ざしたい
波佐見の観光への思い

「OPEN-END」を訪れたお客さんから「お昼はどこで食べたらいいですか」と聞かれることが多く、飲食店が少ないと感じているそう。空いている店舗に飲食店を誘致するなど、町づくりにも興味があると言います。「波佐見は、頑張れば新事業でもできる土壌がある。イベントやポップアップなどで知り合った様々な業種の人たちがいるので、人と町を繋げるようなことができたら」と話してくれました。
また、建物にも造詣が深く、空き家や空き店舗をプロデュースして活用方法を提案するようなこともやっていきたいと考えているそう。「どこに限らず地方には縛りがあったりするけど、それは自分たちの世代には関係ないこと。特に移住者はフラットでいられる存在だと感じています。例えば、波佐見だけに捉われず、有田やそのぎ、嬉野、川棚…色々な壁を越えてアプローチしていきたい。いいものはいいと感じてもらえたら」。広い視野でのローカルデザインを描く松尾さん。話を聞けば聞くほど色々なアイデアが飛び出し、商売を超えた町づくりへの意欲は止まりません。

※取材日/令和5年6月