きっかけはコロナ禍
これからの働き方と移住
作り手の顔が見える生活の道具や、素材にこだわった衣服などを取り扱う「HANAわくすい」。ここを目当てに波佐見を訪れる人がいるほど、波佐見の観光を語るうえで欠かせない存在です。今回お話をうかがったのは、2022年から店長を務めている森村かおりさん。「HANAわくすい」で働くことになったきっかけや、波佐見での暮らしを聞きました。
大学卒業後から携わってきた
暮らしの質を届ける仕事
三重県出身の森村かおりさん。大学から神戸に移り、それ以降も神戸や大阪で過ごしました。大学卒業後は、海外のキッチン道具を取り扱う商社や、オーガニックなど素材にこだわったアパレルブランドに勤めたそうです。「20年以上も前なので、当時はル・クルーゼなども珍しく、お客様はプロの料理家やこだわりのある方が多かったように感じます」と森村さん。暮らしの道具に関わる仕事の起源はここにありました。
コロナ禍で感じた閉塞感
田舎暮らしへの興味も
移住を考えるようになったのはコロナ禍になってから。百貨店内のショップで店長を務めていた森村さんでしたが、コロナ禍での休館などもあり在宅での仕事が増えました。その時の様子を「閉塞感があった」と思い返します。「新しいブランドの立ち上げに携わったり、後任のスタッフの教育なども行い、今の会社でできることはやったかなという感じがありました」。そうしたなかで、自分自身の暮らし方や、新しい働き方について考える時間が増えていったそうです。
きっかけは「日本仕事百貨」
まずは職場体験から
きっかけは、いろいろな生き方や働き方を紹介するWEBサイト「日本仕事百貨」に掲載されていた「HANAわくすい」の店長候補の求人でした。母方の実家が佐賀県嬉野市にあり、“その隣”くらいの印象だったという波佐見。「白山陶器が好きで、一度だけ直営店に伺ったことはありました。波佐見に行ったのはそれくらい」と森村さん。ほとんど縁のない土地でしたが、仕事内容に興味が湧き、まずは4日間の職場体験で波佐見を訪れることになります。
今までの仕事の集大成として
「HANAわくすい」を選んだ理由
産地である波佐見の雰囲気に、古い建物を生かした「HANAわくすい」の佇まいがマッチしてることに魅力を感じたという森村さん。「正直、お客様の多さに驚きました」と職場体験の印象を話してくれました。その一方で、お客様が商品を手に取る様子を見て、まだまだ伸び代があるとも感じたそう。「HANAわくすい」に並んでいた商品は今まで働いてきた会社で取り扱っていたものも多く、経験や知識が生かせると思ったのも決め手となり、職場体験の後に就職を決めます。2021年12月のことでした。
それから1ヶ月もせずに、森村さんは波佐見で暮らすことになります。住まいは「HANAわくすい」の運営母体である「西海陶器」の社宅。裏には山、前には蛍が飛ぶ川が流れるのどかなアパートです。運転免許を持ってはいたものの、ほとんど運転することはなくペーパードライバーだったという森村さん。しばらくは自転車で生活していたそうですが、不便さを感じ車を購入します。「やっぱり車がないと生活は大変ですね 笑。 自転車で生活していると言うと、周囲の人には驚かれました。でも、自転車だからこそ気づける景色もあって新鮮な経験でした」と思い返します。
「HANAわくすい」を舞台に
これから考えるアプローチ
商品のセレクトから店舗運営、スタッフ教育までと多岐に渡る店長の仕事。良いところは残しつつ、変えていけるところは変えていきたいと考えているそう。「HANAわくすいのお客様は2種類いらっしゃいます。九州近郊にお住まいのリピーターで“こだわりのある道具や物が好きな方”、そして観光で波佐見を訪れていて“ちょっとしたお土産が欲しい方”。2種類のお客様へのアプローチをバランスよく取るのが目標ですね」と「HANAわくすい」の目指す姿を教えてくれました。
波佐見での暮らしはというと、地元の人には外からの人を受け入れる気質があると感じるそう。「干渉しすぎず、困ったことがあれば助けてくれる。その距離感が調度いいですね」。困ったことといえば、湿度が高く虫が多いこと。あとは“九州は暖かい”というイメージとは異なり、冬は想定外に底冷えする寒さだとか。「でも、そのあたりの困りごとは地元に住むスタッフや周りの人に聞いて対策しています」と笑顔を見せてくれました。
「HANAわくすい」は不思議なお店で、その時代の店長によって少しずつ性格が変わるように感じます。“今までの仕事の集大成にしたい”と語った森村さん。これからどのような表情を見せてくれるのか、森村さんが育てる「HANAわくすい」に注目です。